ジンガ (GINGA)

もうひと月も前の話で恐縮ですが、サッカーのクラブW杯、インテルナショナル・・・世界一になりましたね。彼らは名前負けしてしまうとか、物怖じするとかいう事が全くなく、冷静に自分たちのサッカーをやって見事に勝ちました。
フィールドにいる一人一人が高い戦術眼を持っていて、共通したゲームプランを頭に描いたゲームを進めていることには驚きを隠せません。
非常にしたたかな、ブラジル国内での日々のゲームの中から培われて来るものなんでしょうね。まして17歳だの、19歳だのといった選手が主力として活躍していたんですから、やっぱりゲームは「やらされる」ものではないんだなあと実感させられました。
イアルレイうまかったですよね。Jリーグこないかな。
このゲームでプレーしていたインテルナショナルの選手を見ていて、ふとジンガの事を思い出しました。

昨年、W杯の開催前の4月15日から順次、全国各地の映画館で『ジンガ(GiNGA)』という映画が上映されました。
http://www.ginga-cinema.jp/
御覧にあった方はいらっしゃいますでしょうか。
ブラジルサッカーの魅力の源流にせまったドキュメンタリー映画です。レアル・マドリーのロビーニョが出演しています。既に10月18日にはDVDが発売、レンタルも開始されました。

ブラジル人は誰もがジンガを持っている・・・。
ジンガとは、ブラジルサッカーの真髄と言うべきものでしょうか。ブラジルでサッカーを愛する人の心に宿る魂のようなものと言っても良いかも知れません。

ジンガ10箇条
(1)ジンガとは、身体を揺らす動きだ。
(2)ジンガとは、素早い足さばきで相手をかわすフェイントだ。
(3)ジンガとは、カポエイラの基本動作だ。
(4)ジンガとは、日常生活の中に常に存在している。
(5)ジンガとは、音楽と共にあるライフスタイルだ。
(6)ジンガとは、ブラジル人の魂そのものだ。
(7)ジンガとは、ブラジル人に夢を与える。
(8)ジンガとは、苦境を気楽に生きるための手段だ。
(9)ブラジル人は、生まれた時からジンガを持ってる。
(10)そしてジンガは、望むもの全てに与えられる。

(『GOAL』2006年5月号56・57頁参照、『ジンガ(GiNGA)』の特集記事が載っています。http://www.s-pulse.co.jp/s-pulse/magazine/goal00.html


ジンガは辞書的には「揺れる」という意味のようですが、サッカーにおけるフェイントの時の足さばきを指して使ったり、カポエイラというブラジルの護身術における敵を幻惑するための足、腰、身体の動きのことを指しても言うようです。
サッカーもカポエイラも、相手の動きの裏をいかにとることができるかが重要ですが、こうした動きはジンガが有ることによってなせる賜物と考えるんですよね。ですからジンガは持っているか、持っていないか、どちらかになる訳なんですが、ブラジル人の多くはジンガという形の見えない象徴的なものを、彼らのサッカーに対するアイデンティティとして捉えているような感じがします。

ブラジルの国内サッカーは、現在も一対一の駆け引きが大きな見せ場となっています。また誰しもブラジルと言えば、個人技の高さを思い浮かべますよね。こうした個人技の高さはストリートサッカーやフットサルといった、「サッカーを楽しむ」という彼らの姿勢の中から自然と湧いてきているものに思えます。
「楽しむ」と表現すると、至極美しいもののように聞こえますが、彼らのサッカーはとっても「したかかな」ものでもあります。決してキレイゴトではないのです。

ブラジル人はジンガを生まれながらに持っているのではなくて、ブラジルに生を受けたことによってジンガを持つことになるのでしょうね。
日本人で言うところの「侍魂」に似ていますよね。本当に「侍」だった家系なんて数%しかないんでしょうが、その心は日本人の奥底に共通して眠っている・・・みたいな考え方しますから。

今後ブラジルサッカーに触れる機会がある時は、彼らのジンガを意識して観察して見ましょう。
我々サンバのリズムに程遠い「侍」日本人でも感じることができるのか・・・どうか。